Siomizuのブログ

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学振(DC1)に落ちたので冷静に自己分析してみた(文系)

2019年度の学振(DC1)に申請していましたが,案の定落ちてしまいました。

そこで,備忘録の意味も含めて冷静に自己分析してみました。

受かった人の記事や,面接まで行った人の記事はよく見かけるのですが,普通に落ちた人の記事はあまり見かけないので,何かの参考になればと思います。

 

◼︎テンプレ

結果:不採用B
資格:DC1
系別:人文
分科と細目:
業績:査読論文1(単著),査読なし論文5(共著5,うち3が紀要,2が報告書),国際学会3(単著2,共著1),国内学会2(いずれも単著),研究発表会2

出身大学:
受入先:修士の出身研究室
指導教員の知名度(出身):有名だが自分の専門分野ではない
指導教員の知名度(受入):同上
出願回数:1回目

Tスコアは3.14で平均よりちょい上,将来資質が3.7で研究計画と研究遂行可能性がそれぞれ3.3でした。

査読論文が単著で1報ありますが,掲載誌は一流誌ではなく,その2ランクくらい下の雑誌です。ただ,いわゆる卒論クラス,短報クラスの論文ばかりが載る雑誌ではなく,分野では一定のレベルがある雑誌です。もちろん,現段階で査読誌に論文を載せている人は多くないので,それなりの業績とはいえるかも知れません。

 

なお,今年の人文系DC1は採用者が60名ちょっと,面接者が20名ちょっとで,例年より面接者が少なく採用者が多い印象です。全体の申請者は360名程度いたでしょうか。

 

全体として「将来性はそこそこあるが,研究計画が平凡すぎる」という印象でした。

 

◾︎何がダメだったのか

 

①卒論,修論,今後の研究でそれぞれテーマが一貫していなかった

自分は学部の時にいた研究室から,修士進学時に隣接分野の別の研究室へ異動しました。今いる研究室は,もともと大学に入る前から行きたかった研究室だったのですが,大学入試の時点で入試に失敗したこともあってその願いは叶わず,大学4年間は隣接分野の別の研究室で研究をしていました。

大学4年間の研究は面白かったのですが,隣接分野ということもありテーマ設定や方法論が異なるため,学部での研究と修士での研究は切り離さざるを得ませんでした。そのため,修士1年時は研究テーマの模索に苦しんでおり,学部と修士で一貫したテーマに取り組んでいるほかの院生友達からは遅れをとってしまったのかなと思います(ようやく修士2年の今頃になって研究テーマが定まってきました)。その結果,学振の申請書の「今までの研究」の部分をうまく書けなかったり,「これからの研究」で何をやりたいのか,想像を膨らませることができませんでした。最大の敗因はここにあると思います。

業績に関しても,単著で書いた査読論文は学部時代の研究をもとにしたものだったので,修士での研究やこの先の研究とはほどんど接点がありません。また,学会発表も1報を除けばほどんどが学部時代の研究をもとにしたものだったので,そういった点を踏まえれば業績があるように見えて,今回のテーマに関連する業績がなかったのかもしれません。

 

②対象となる「研究テーマ」「先行研究群」をうまく書けなかった

今までに述べてきた通り,自分には一貫した研究テーマがなかったため,申請書全体を見渡しても「この人は何をしたくて今まで研究に取り組んできたのか」というアピールポイントが薄かったように思います。例えば,人文学の中でも哲学,哲学の中でもギリシャ哲学,あるいは中国哲学など,大きな枠組みで取り組んできたテーマがあれば,審査員も申請書を読んで「この人は中国哲学の枠組みで研究を続けてきたんだな」ということがすんなり頭に入るのだと思います。

研究の大きな枠組みが不明瞭なまま申請書を書いていったため,研究で最も重要となる「先行研究群」をうまく記述することができませんでした。色々な分野からちぐはぐと先行研究を持ち寄ってきたがために,不安定な枠組みの中で論を組み立てるほかなく,自分としても「なんか違うんだよな」という印象が強く残りました。先行研究群を意識できないと,自分がどんな問題を設定できるのか,どんな視点で研究を進めていくのか,この研究は何を明らかにするのか,この研究は何が新しいのか,という研究の根幹部分が揺らいできてしまいます。

大きな研究テーマと枠組みの中で,その枠組みの中で使われる先行研究群を意識して記述できなかった点が,やはり敗因の一つだったと思います。

 

③実際にどんなことを調査したいのかが明瞭でなかった

人文学の分野でも,文献調査なり博物館調査なり参与観察なり,なんらかの調査を経て研究を進めていくものです。今回の申請書では,具体的に「いつ,誰と,どんなことを,どこで,どのような形で」調査して,それをやると「何が明らかになるのか」という一連の研究手続きを記述することができませんでした。よく学振のアドバイスで研究のフローチャートを載せる,というものがありますが,あれは人文学や社会科学の分野でも重要だと思います。個人的には,今後学振の申請書を書くにあたって一番重要になってくるのはどんなことを調査したいのかという部分をいかに書けるかということだと思います。もちろん,フローチャートの中にはうまくいかなかった場合の対処法も記載して,研究の遂行可能性についても十分に評価する必要があります。さらには,自身の研究能力,研究スキル,語学力などを踏まえて,その実現可能性についても精査する必要があります。今回の申請書で「研究計画」「研究の遂行可能性」の評点が平凡なものだった理由は,ここがうまく書けていなかったからだと思います。大きな枠組みの中で先行研究を精査するとどんな課題が設定され,その課題をどのように解決するのかというフローチャート,そしてそのフローチャートを実行することでどのようなことが明らかとなり,それは大きな研究枠組みの中でどのような寄与をするのか,(さらには社会的にどのような影響を与えられるのかという点まで述べられると最高だと思います)という流れを決める根幹となる部分が,この「どんなことを調査したいのか」というところだと思います。

やはり,この部分をよく書けている人はDC1に通っている気がします。

 

◾︎今後に向けて

 

★どんな人が学振に通っているか

今回,自分は残念ながらDC1の申請には落ちてしまいましたが,まわりの院生友達や先輩で学振に通っている人が複数名いました。素直にすごいと感じるとともに,研究室全体としてみてもなかなかの成果だと思います。そういった人はどんな研究テーマで申請し,なぜ通っているのかを分析すると,「卒論・修論・今後の研究の大きな枠組みが一致していた」ことが何よりも大きいです。大きな研究枠組みが一致すれば,おのずと先行研究群が設定され,その中での課題を導き出し,実際にどんなフローチャートで研究を進めていくのかが記述しやすくなります。自分の場合はやはり,卒論と修論の枠組みがかなり異なるのに,それを一緒くたにして書いてしまった辺りがダメだったんだろうなと思いました。

もちろん彼ら・彼女らは自身の一貫した研究テーマに関する業績を地道に作ってきていました。査読論文は出ていなくとも,学会発表をたくさんこなしたり紀要論文を書くことも重要だと思います(もちろん一貫した研究テーマに関して)。さらには,優秀な学業成績をおさめていた(学部長賞とかポスター賞とかベストプレゼン賞)ことも大きく採用に関わってきたと思います。

これから研究を進めていく学部4年生や修士1年生の中には「他の研究テーマも極めたい」という人も多いと思います。もちろん,1つのことだけを極めるのが研究ではありませんが,研究者としてのキャラクター性というか,「その人にしかできない独自の一貫した研究テーマ」というものがこれからの時代評価されていくのだと思います。幅広い視点でものごとを考えていくことは重要ですが,自分にしかできない一貫したテーマやメッセージを絞りつつ,研究をつくりあげていくことが大切なのだと思います。そういった意味で,学振はその人にしかできない独自の一貫した研究テーマを評価してくれるという点ですばらしいものだと思います。

 

★学振の制度的側面とかもろもろ

今までさんざん「一貫した研究テーマが大切」ということを述べてきた理由の一つに,学振(とくにDC1)に関する制度的改定があります。従来の学振DCに関してはあくまで「研究計画」を重視するとはいいつつも,業績面での評価が偏重されがちで,肝心の中身についての評価があまり重要視されないという傾向があったようです(先輩方や先生から聞きました)。ところが,近年の審査より,学振DCの審査に関しては「研究計画」を重視して評価する方針へと変化したそうです(これは学内の学振担当者が説明していました。多分学振のサイトのどっかに説明があるはず)。このことは,もちろん業績をあげることは大切だが,それよりも一貫した研究テーマに基づいた,緻密な研究計画を評価するようになったということです。学振DCや学振PDを取っている先輩方,それから先生方も,ぜひこの点について再認識して学生やラボの後輩にアドバイスをしていただけるとよいと思います。

 

申請書の添削などについて

それから,学振のアドバイスに「いろんな人に申請書をみてもらう」というものがありますが,あながち間違っていないことだと思います。同じラボから複数名学振を出している研究室は,ラボ内にそういうシステムが存在している場合が多いと思います。実際に自分も,申請前に学振をとっている先輩に3〜4回,同じく学振を申請した同期と10回くらい,学振と関係ない友達に4〜5回くらい,研究室のボスにも2回ほどチェックしてもらいました。学振をとっている先輩からのアドバイスは,説得力のあるものでとても参考になった点も多くあります。

ただ難しいところは,自分の研究テーマと先輩や同期の研究テーマが必ずしも一致するわけではないというところです。自分の研究テーマは自分にしかわからないものですし,あくまで申請書の書き方や考え方,テクニックの面で参考になるところはある,という心持ちで添削をお願いするといいと思います。人は不安になると,かっこよく見える人の金太郎飴になろうとします。自分はおそらく,申請書を執筆する段階で学振をとっている先輩や,優秀にみえる同期の金太郎飴になりかけてしまった時期があったんじゃないかなと思います。「ここはこうするといいよ」とか「これはダメだよ」というアドバイスをいろんな人からいただくと思いますが,自分の中で腑に落ちない部分は真似しなくていいんです。アドバイスを自分の中で自己分析して,やっぱり自分が納得のいく形で出した方が絶対後悔がないと思います。だって,今あなたが申請しようとしているのは,自分の独自の論理で形作った,自分の一貫したテーマの中で行う,自分にしかできない研究なんですから。

このあたりは,本当に難しいところですよね。でも学振をとっている先輩方や同期をぜひ有効に使って申請書を書き上げるといいと思います。その人なりのテクニックとか,論理を学ぶいい機会になりますし,研究の表現方法とかで悩んでいることを相談すると,「そうだ、こういう見方で研究できるんだ!」という再認識があったりしますから。自分はブログみたいな文章をダラダラ書くのは苦にならないのですが,今自分のやっている研究をシンプルに書くとどういう位置付けになるのかとか,そういう文章を考えるのが苦手なので積極的に先輩を活用して議論を発散させていました。あまり長い時間議論をすると,自分の場合はやはり金太郎飴になってしまうので,自分が悩んでいることをピンポイントで明確にして相談するとよかったのかなと思います。最近はそうしてます。

 

◾︎最後に

いろいろと書いてきましたが,やはり学振に落ちると少し落ち込みます。だって目の前から生活費720万円+研究費300万円が消えていくわけですから。1人に1,000万円もらえると考えるとなかなかすごい制度だと思います。でも,学振が自分の研究スタイルだったりだとか,自分の表現方法を見直すいい機会になることは間違いありません。自分は来年も,絶対にDC2を申請するつもりです。もちろん,今度は一貫したテーマで。とても悔しいですもんね。今回,周りでDC1をとった同期に「一番応援してるよ!」と言われたのが何よりの救いです。自分の場合,今度は同期や先輩方といろいろ情報交換をしながら学振を申請できるので,恵まれた環境にあるのだなと感じており,とても嬉しいです。次はぜひ自分に学振をとらせてください。

自分は学振をとったわけではないので,もしかしたら学振をとった人はまた異なったメンタルのもちかたとか考え方があるのかもしれません。そのあたりについて,インターネットで議論できると面白いなーとは思います。このブログを見ている人も少ないと思いますが,コメントとかでいろいろ自分なりの見方や,考え方などを教えてもらえると嬉しいです。

 

というわけで,この記事が自分の備忘録としてだけでなく,いろんな人の参考になりますように。