Siomizuのブログ

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学振DC2に採用内定したので冷静に自己分析してみた(文系)

2021年度日本学術振興会特別研究員(DC2)に面接免除で採用内定をいただきました。

そこで、備忘録の意味も込めて、冷静に自己分析してみました。

 

DC1、DC2と2度学振に落ちた人が、その後採用になった記事はそれなりに価値があるだろうと思い、書いてみました。

 

※これから述べる自己分析は,あくまでも「DC2」採用内定者の分析です。DC1にはDC1の書き方があるだろうし、PDにはPDの書き方があると思います。ですので,これからDC2に申請を行う,博士後期1年生・博士後期2年生向けを対象として記事を書いています。

 

■テンプレ

結果:採用内定

資格:DC2

系別:人文

分科と細目:

業績:査読論文1(単著)、査読なし論文8(単著1(修士論文),共著7(うち5が紀要、2が報告書))、国際学会4(単著2(うち1査読あり)、共著2)、国内学会8(単著5、共著3)、表彰2、助成1

 

受入大学

受入研究室:修士の出身研究室

指導教員の知名度(出身):有名だが自分の専門分野ではない

指導教員の知名度(受入):同上

出願回数:3回目

 

正直、全く採用されるイメージがありませんでした。学振には期待していなかったので、来年度からは株式投資で生計を立てようかとも考えていたほどです。そのくらい、申請書の出来は悪かったと思っていました。

なお今年の人文系DC2は採用者が99名、面接者が26名、全体の申請者が567名でした(倍率5.7倍)。

 

■何がよかったのか

今述べたように申請書の出来は悪いと思っていたので、それでも今回採用に至った理由には何があるのか、自分なりに考察してみました。大きく分けると4つあります。

①業績が着実に増加したこと

当たり前ですが,DC1,DC2(1回目)の申請時よりも業績が増えています。特に,査読なし論文と学会発表の数は大幅に増加しました。ただ,査読論文の数はDC1申請時と同じです。それでは,どこが差別化の要素になったかというと,「研究表彰」2件,「研究助成」1件の存在かと思います。前者に関しては,修士論文に対して大学の研究科から表彰をいただきました。また,M2の時に出した査読付き論文に対して,論文が掲載された学会から若手奨励賞をいただくことができました。特に若手奨励賞は3年に1回しか審査の機会がないことから,受賞の連絡をいただいたのも申請書提出の数日前でした。まさかこの期に及んで奨励賞をいただけるとは思ってもいなかったので,本当に幸運でした。

業績については,もちろん査読論文の数を増やすことが最も重要だと思います。ただ,論文のパブリッシュに時間のかかることの多い文系分野の研究では,思うように査読論文が増えないこともあると思います。「表彰歴」や「研究助成の採用歴」でも、ないにこしたことはない、ということです。無論、最優先で増やすべきは査読論文です。(※ただ、大したことのない査読論文を増やしてもしょうがないとは思いますが)

DC1の不採用から2年間で出した助成金の申請書は、計7件にのぼります。少なくない時間を費やしましたが,その時間で学んだことも大きかったと思います。特に,申請書の書き方のテクニックと,助成機関との相性についてはかなり意識させられました。自分は文化系に強い機関から研究助成をいただいています(昔からこの機関の助成はすごく憧れていた!)が,これも自分の根底に「文化」に対する強い興味・関心があったからこそだと思います。

 

②研究計画の「緻密さ」を押し出したこと

とはいえ,業績だけでは勝てないのが学振です。今回の申請書で最も意識したことの一つとして「研究の緻密さ」が挙げられます。とにかく細かく,とにかく緻密に研究計画を作り上げました。緻密な研究計画を作る上では,「何を明らかにしたいのか」「そのためにはどうすればよいか」を細かく書くということです。以前、筆者はDC1に落ちた時に「実際にどんなことをするかが明瞭でなかった」という反省を書きました。今回はこの反省を生かし,きちんと意義づけできているか,何を,どういう方法・手順で明らかにするか,を何回も見直しながら書き進めました。

文章を書く上では,パラグラフライティング論理構造を意識しました。いくら緻密な研究でも,その意義を説得力をもって説明できないことには,意味がないように思います。いくらか論文を読んでいるうちに,説得力の強い論法や,意義を訴えかけやすい論法が存在することがわかってきました。

さらに,今年の申請書から「研究計画」欄が大幅に縮小され,研究の特色・意義づけの欄が拡大しました。この点については,今までDC1,DC2をとった先輩方・同期の申請書に加えて,科研費の研究成果をもとにした書籍をいくつか借りてきて「第1章 はじめに」の部分を読み込みました。なぜなら,科研費の申請書は学振と共通する部分も多く,科研費をもとにした書籍であれば,そうした特色や意義付けがしっかりと記載してあるのではないか,と考えたからです。

 

③研究の「現実的な」実現可能性を押し出したこと

今回、特に押し出した要素です。DC2の申請ということで、実際の採用期間は博士課程の後半に該当します。研究助成の申請経験を経て気づいたことの1つとして「研究の実現可能性を説得力をもって記述する」ということがあります。特に今年度からは「研究業績」欄がなくなり「研究遂行能力」欄に変更されるなど,過度な業績至上主義を律するような申請書へと変化しました。「あなたはこの研究を本当に実現できるのか?」をうまく証明することが今まで以上に大切になっているということです。

 

一点工夫した点として「研究遂行能力」欄の記述スタイルが挙げられます。今年からは,単なる業績の列挙を行わないように,という注意書きが申請書にも記載されてありますね。これには必ず従ってください。申請書に記載されてある注意書きを,申請書に反映させるというのは言わずと知れた学振テクニックです。

自分の場合は「研究遂行能力」欄の上部3分の2に研究業績を記載したあと,残り3分の1に文章で「研究遂行能力の根拠の説明」を記述する欄を設けました。

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既に研究の半分くらいを進めることができている,という旨を要所要所に盛り込みました。例えば,財団からの研究助成を使って,特別研究員採用までにある程度研究を進めておけることなどです。DC2採用になる頃には,博士後期2年・博士後期3年になる,という院生がほとんどだと思います。既によく研究を進めているな,という根拠(論文・学会発表・その他研究助成等)があると,審査員に良い印象を与えることができると思います。

 

④(おまけ)自粛期間に研究をどんどん進められたこと

新型コロナウイルスの大流行により,4月・5月・6月頭までは大学への立ち入りが禁止されていました。この期間,指導教官や院生との対面接触は極力控えるように指示が出ておりました。4月はゼミもなく,非常勤はオンラインでの講義でした。

ある意味では,自分のペースで,自分のやり方でどんどん研究を進めることができた,ということです。自分にとって,この自粛期間の数ヶ月は大きな財産になりました。

すでに学振を取っている同期や,国費で留学している先輩と何度もビデオ通話を行い,申請書の添削や,研究計画に関する深い相談を行うことができました(ほんと感謝)。「たくさん人に見せる」や「たくさん先輩に聞く」ことも大切ですが,加えて「自分にとってやりやすいやり方で研究を進める」ことが何より大切なのだということが分かりました。

もしかしたらこの時期,自分の都合のいいように人と「たくさん話す」ことができたのかも知れません。「自分主導」で研究を進めて,「自分」の研究のやり方や「自分」の将来について考えて行動することができたのだと思います。 それが本当によかったし,自分の性に合ってた。

 

(あとこの時期にiMacやMacbookProを買ったりして,機材投資を進めることができました。論文を書く・研究を進める上でPCのスペックは結構重要です。Appleは学生ローンが組めるのでそれで買った。)

 

■今後に向けて

★お仕事をやめられる

学振DC1に落ちた後,修士論文を書き上げた1月の終わりに,指導教官から「非常勤で教えない?」とのお誘いをいただきました。今思えば,学振に落ちてその後の生活をどうするか,途方に暮れていた自分を拾い上げてくれようとしたのだと思います(普通M2やD1の学生に非常勤は回ってこない)。そういうわけで,昨年の4月からは週2回,非常勤講師を務めています(現在進行形)。ただ,非常勤先が特殊な形態の学校のため受け持ちのコマ数が非常に多く,学生の生活指導なども行う必要がありました。ですので,授業準備のみならず,授業それ自体や通勤(往復3時間半)に時間をとられることが大きなストレスになっていました。というか普通,博士院生に週6コマは多い。

D1,D2は非常勤の収入に加えて,学生支援機構の奨学金(その他リサーチアシスタントなどもろもろ)を組み合わせて生活していましたが,学振があれば無理に働く必要がなくなり,週5で研究に専念できます。さらにうちの大学では学費が全額免除になります。

とはいえ,非常勤の仕事をして学んだことはたくさんあります。第一に,自分の専門分野に対する理解が大幅に深まりました。第二に,学生に教えることの楽しさを理解したことです。第三に,授業の構成・計画立案の方法が非常に勉強になったことです。とにかく,学生に教えることはすごく自分の勉強になった。ただ,投球練習(授業)をしていかないことには学生への指導・教育もうまくなりません。博士取得の見込みが立てば,非常勤講師のお仕事もいただいていきたいと考えています。

 

★どんどん論文を書く

これまで述べてきたように,自分が現在もっている査読論文は1報です。DC1をとった同期は,その後加速度的に論文をパブリッシュし,査読論文が2報、3報と増え続けています。彼らに負けないように,自分もどんどん査読論文を出していきたいと思います。自分の場合,週2で慣れない非常勤をやっていたこともあり,D1の段階で修士論文の投稿・査読に遅れをとってしまいました。同時並行で博論や報告書の調査・執筆を行っていますが,プロジェクトマネジメントもこの時間スタイルだと難しいものがあります。そこでD1の終わり頃から,徐々に論文執筆の「型」を作るとともに,プロジェクト管理ソフトを用いて作業管理を行い,円滑に調査・執筆を行えるようなスタイルを構築してきました。未だ100%達成できたわけではないですが,徐々に結果が出てきているように思います。この「型」と「管理」が柔軟性をもってうまく回ってくるようになれば,自分の研究スタイルにとって大きな力になると思います。とにかく,自分の研究・生活スタイルをマネージすることが博士院生にとっては大切だと思います。あと最近思うのは、査読論文なんて(ある意味)大したことないので早く出しちゃった方がいい。

 

■最後に

いろいろと書いてきましたが,学振に受かっても受からなくても,どういう研究者人生を作り上げていくかはその人次第だと思います。自分も受からなかったら,多分今とは違う研究者人生を描いていたと思います。ただ,やはり受かったものは嬉しい。何より研究者としての生活を送るためのスタートラインに立てたのですから。自分の場合,身の回りに学振採用者が複数名おり,様々なアドバイスをいただけたことは幸運だったと思います。また,自分の採用体験も踏まえて,後輩に学振申請書のアドバイスをしていけたらと考えています。

 

というわけで、この記事が自分の備忘録としてだけでなく、いろんな人の参考になりますように。